③ 路上駐車、落下物、飛散等による進路変更時の指導方法

 


 道路を走行していると、路上駐車、路線バスの停車、工事の車線規制、施設入り・右左折車両の停車等により余儀なく車線変更しなくてはならない場面が多々あり、また時には落下物や物が飛散してくることもあります。





1 路上駐車、バスの停車、工事等時の車線変更の指導方法

 

 下記写真のように路上駐車、路線バスの停車、工事の車線規制などの場面では、

「右側車線に進路を変えなくてはならない場合」

「少しのはみ出しで回避できる場合」

とがありますが、このような状況下で交通事故を防止するための指導はどのようにしたらよいのでしょうか。

① 駐車車両による車線変更

③ 工事による車線変更

② 路線バスの停車による車線変更

④ 施設進入・右左折車両の停車による車線変更



 車線変更は重大事故になる要素を秘めた運転行動

 今年、新聞等で騒がれた「警察車両が前方に路上駐車していた車を避けるために右側車線に変更した際、後続を走行中のバイクが転倒し死亡事故」を考えますと、日頃何気ない行動が一歩間違えば重大事故につながること、また安全確認と安全運転行動をとる判断の必要性がわかります。

 駐車・停車車両、工事場所等を回避するための車線変更時の交通事故防止を考る。

 

 車線変更しなくてはならない状況とドライバーの判断および安全行動を表にすると下記のようになります。

ドライバーが進路を変える場面

車線変更する

 事前

把握

先見性

事故を起こさないための運転行動

指導

方法

 目  的  
意思

咄嗟

 合図

安全

確認 

速度 

車間

距離

制動 
 駐車車両、工事場所の回避  ○  △
 落下物、物の飛散回避   ◎ 

 この表を見ると、特に「事故を起こさないための運転行動」をとれるかに懸かってきますが、この安全運転行動をとるためには、“ 前段階でのドライバーの判断 ” 表「車線変更する意思の有無」ⒶⒷが、交通事故発生要因大きく影響しますので、②と③を分けて検討します。

 

▼指導方法②の 駐車車両、工事場所発見時、ドライバーの運転状況から見た運転行動予測 

 駐車車両、工事場所回避前のドライバーの運転状況から行動を予測しますと下記表が考えられます。

 表内 ●行動可能性 

    △ 〃   可能性 

 b 事前把握

と意思

交通事故発生要因の運転行動

a 車線変更の意思を

持つまでの運転状態

車線変更意思が

持てる

咄嗟

制動

直前

停止

ハンドル

合図

なし

安全

確認

なし

速度 速い
定速
×

車間

距離

狭い
広い
 速度が速い × 車間距離短い ➡上記発生要因の運転行動が複合すると➡「事故の可能性大」
脇見 「脇見」が加わると、相手の回避行動が無ければ交通事故になる確率が更に増す

ことが考えられ、「 前段階でのドライバーの判断」は、の速度と車間距離が大きく関わりCの「 交通事故発生要因の運転行動」つながってていることが見えてきます。


 答えは「余裕のある運転」に行き着きます。

 「早い速度」「狭い車間距離」は、前方の道路状況の把握の妨げになり、咄嗟の運転行動を強いられることになり、ドライバー自身に身についている運転行動

● 急ブレーキでその場に停止する。

●「合図を出さない」「安全確認しない」「急ハンドルで隣車線に進入

などの行動で交通事故に発展する確率が変わってきます。 


 これらの指導は集合教養では難しい面があり、一番は同乗指導ですが、これがてきない場合は、社員の車に同乗した際に指導してください。


 また、上記考え方から行き着くところは「車は急に止まらない。」ことを理解させる必要があり、私どもが提唱しております「原点回帰講習」を通じて「車は急に止まらない。」「車間距離」等を起点として「合図」「安全確認」に発展させた指導が一番と考えます。

 

▼参考

   駐車車両が起因するヒヤリハット状況

駐車車両が起因する ヒヤリハット状況 ヒヤリハット体験による自身の改善内容
① 車で走行中路上駐車している車の右ドアーが急に開き、接触しそうになった。 駐車している車のそばを通過するときは極力離れて通過する。
② 狭い道を走行中路上駐車の脇を通り抜けようとしたら、車の陰から人が飛び出してきた。 狭い道は徐行し、何かあるかもしれないという予測運転を心掛ける。
③ 走行中タクシーが二重駐車で停車した為、仕方なく車線変更をして通過しようとしたら、タクシーの前に停車していた車が、自車の前に飛び出してきた。 車線変更をする時は、後方の確認は勿論のこと、前方にも十分に注意を払い、ゆっくりと行う。
④ 会社へ帰る途中。左車線に大型トラックが停車しており自分が右車線を走行していたら、左車線から乗用車が急にこちらに進入してきた。 相手の車両のスピード感がなんとなく速く感じられ、こちらに侵入してくるかもしれないと思っていたので、かもしれないを心掛ける。
⑤ 二車線道路の左側を走行中、交差点先に停車していた車両を避けようとしたら、右折車線にいた筈の車両が直進してきて、接触しそうになった。 急な車線変更をするのにも問題はあるが、交差点付近では十分な確認を行い、安全運転を心掛ける。

同乗指導時の考え方とポイント

 

 街を走行しているとよく見かける写真の事例で説明します。

写真説明 -交通量の少ない2車線道路-

① 車間距離を詰めて走行

 → 前車が交差点で左折するため合図

② すかさず合図をせず急に右に車線変更

③ 交差点内で合図をせず左に車線変更

このような行動をするドライバーは、

 

▼ 事故を起こすタイプ (指導ポイント)

 ● 前車との車間距離が短い。

 ● 指示器を出さず車線変更をする。

 ● 脇見や考えごとをしている。

 ● ブレーキを使用せずハンドル回避する。

人です。

 

 このような人が

今まで事故に遭遇しなかったのは、

≫ 右側車線に車が無かった。

≫ 右側車線の車が、前方の状況をよく見ていて

●減速したり、スピードアップして回避

●はみ出してくる車両との接触をハンドルで回避

してくれていたからではないでしょうか?

 


 このように同乗した際の指導と朝礼時でのワンポイント指導で意識づけを図ってください。



2 落下物、物の飛散時の進路変更の指導方法

 


▼ヒヤリハット内容から見る落下物に対する措置

落下物による ヒヤリハット状況 ヒヤリハット体験による自身の改善内容
① 走行中前方ダンプの荷台から、砂利が自車の前に落下し、接触しそうになった。 落下物がありそうな車両の後ろは、走行を避ける。車間距離を十分にとる。
② 運搬中、国道に角材が落ちていて車で乗りあげそうになった 車間距離を十分に取り、緊急回避ができるようにする。
③ 走行中前方を走行していたバスのタイヤがバーストし、破片が自車トラック前まで飛んできた。 車間距離を十分にとるよう心掛ける。
④ 走行中前方車両から落下物が飛んできて、慌ててブレーキを踏み難を逃れた。道路が空いていたから良かったが、危うく大事故になるところだった。 車間距離を十分にとり、周囲の確認を怠らない。
⑤ 走行中平ボディー車が、自車の前へ車線変更した時にバウンドしたのか、アルミ製で2m程ある脚立が荷台から落ちてきた。車間距離があったので回避できたが、危うく事故になるところだった。 車間距離とスピードは、常に確認する。荷台の荷物はしっかりとロープで固定する。

 

運転行動からの予測と咄嗟の判断

 

 この落下物、物の飛散時の指導は難しい面がありが、運転行動面から表にすると下記のようになります。 

ドライバーが進路を変える

車線変更する

 事前

把握

先見性

事故を起こさないための運転行動

指導

方法

 目  的  意思 咄嗟  合図

安全

確認 

速度 

車間

距離

制動 
 落下物、物の飛散回避   ◎ 

ですが、急迫した状況下では「事故を起こさないための運転」は下記表とならざるを得ないと思います。

    急な落下物の発見、物の飛散の場合

 表内 ●行動可能性 

     △ 〃   可能性 

 b 事前把握と意思

c ドライバーの行動

a 車線変更の

意思を持つまでの運転状態

車線変更

意思が

持てる

咄嗟

制動

ハンドル

速度 速い
定速
×

車間

距離

狭い
広い

 

 ほとんど咄嗟の行動になると考えられ、咄嗟の判断でとれる行動は「急制動」と「急ハンドル回避」が考えられます。

 しかし落下物の場合、急制動をしても衝突するかもしれません。

 また、急ハンドルで隣の車線に回避しても通行車両と衝突するかもしれません。

いずれにしても、

≫ 左右車線に車が無い。≫ 右車線の車が、前方の状況をよく見ていて ●減速したり、スピードアップして回避●はみ出してくる車両との接触をハンドルで回避

してくれないかぎり交通事故になります。

 

 下記に同種内容のアンケート結果があります。指導教養での質疑等に活用でると思いますので参考にしてください。

▲ 落下物回避の参考動画の紹介



  ≫ 参考動画

 JAFが運営する「JAFセーフティシアター」シアターに危険な落下物動画があります。


≫ 参考動画

 JAF MATE社「ドラドラ動画」に落下物回避動画があります。


 

「倫理的なジレンマ」に遭遇した場合、

 どのように反応させるべきか?(抜粋)

 

     仏トゥールーズ経済学院の研究者が発表(数百人を対象に調査)

 


あなたならどうしますか?



問1

 「あなたは自動車を運転しています。目の前に10人の通行人が飛び出してきて、このままでは全員をはねてしまいます。あなたがハンドルを切って道路から飛び出せば10人は救えますが、車は壁に激突し、あなた自身が命を落とします。どうしますか?」 


問2

 ドライバーが前方の1~10人を避けるとこんどは歩道にいる歩行者1人をはねてしまう場合どうしますか?


問1の回答 この問題に対し回答者の75%が「自らが犠牲になり10人を救う」と答えました。


問2の回答 半数が「自ら犠牲になり歩行者を助ける」と回答しました。 


 咄嗟の場合、意思と行動は変わるかもしれません。

 しかし、意思をもって安全運転を続けている人は、身体や心に刻まれていますので、このような場面に遭遇する確率を減らす運転行動をするのではないでしょうか?


▼ 落下物、物の飛散時の進路変更指導

 


 このような場面でのリスクを軽減するためには、

  「速度超過をしない。」ことと「広めの車間距離をとる」しかないことを指導してください。

            ▼

 ➡ 視界を広げて緊急事態に対応できる態勢つくる障害物までの時間と距離を稼ぐ

ことで衝突の確率を減少させるということになります。

 

 また回避は、「まずブレーキをかける」ことを指導してください。

 特に物の飛来時によくあるのが、ブレーキをかけずに急ハンドル回避です。

 この咄嗟の場面で、ブレーキをかけずハンドル回避する人は、初心者・新任者の若者に多い行動ですので、前記の内容、車線変更①②、また、各種形態の事故にも通用する「原点回帰講習」を通じて、一連の流れ

自分自身を知る(空走距離(時間)と停止距離)」➡「車は急に止まらない。

➡「車間距離の必要性」➡「安全確認の必要性

➡「合図(合図は車同士のコミュニケーション)

の順での指導方法を行えば理解が得やすく追突の事故防止とも連動します。


▶「車は急に止まらない。」ことの指導は、右のツールを使うと効果的な意識付けができます。


事故惹起者、新入社員の特徴と指導

 

 

事故を起こした人の特徴と指導

 ○車間距離が狭い ○合図が遅い、短い、または合図がない ○安全確認が不十分

 な人が多いので、

 ≫車線変更時の事故防止指導方法②内

  車線変更時の合図・安全確認の順序(事故惹起者、初心者への指導手順)

   ~ 車線変更する意思を持ったら、まず合図(指示器を出す)することを ~

 を繰り返し実践させて意識づけてください。

 

新入社員の人の特徴と指導 

 ○車間距離が狭い 

 ○車線変更のタイミング分らないため、・合図が遅い、短い ・安全確認が不十分

  となっています。

 ○咄嗟の場合、ブレーキを踏まずハンドルで回避する傾向があり、また、急ブレーキが踏めない

 者も見受けられますので、

 ≫「原点回帰講習」での「発進時、後退時の急制動体験」で目いっぱい急ブレーキをかけさせ体験

 させてください。

 また、事故惹起者と同じく

 ≫ ~ 車線変更する意思を持ったら、まず合図(指示器を出す)することを指導 

  を繰り返し指導してください。


香里自動車教習所 安全運転管理支援チーム ℡ 072-831-0668 fax 072-834-0067