運転中の「ながらスマホ」に対する指導方法
~ スマホ運転の危険性を認識させる指導方法 ~
運転中のスマートフォン(以下「スマホ」)や携帯電話の使用・操作は非常に危険な行為で、現在社会問題となっています。
運転しながらのスマホ等の注視や操作は画面に意識が集中し、周囲の危険を発見できず、歩行者や他の車に衝突するなど、重大な交通事故につながる危険な行為です。
では、どのように社員に指導すればよいのでしょうか?
「運転中のながらスマホ」2019.12.01から罰則が3倍に!
2019.12.01改正道路交通法により罰則が3倍になります。
この機会に、ながらスマホの指導を!
「運転中のながらスマホ」で交通事故を起こした場合、取消になる場合もあります。
交通事故を起こした場合の点数計算は、
原因となった違反 + 付加点数(右表)
➤ ながらスマホで追突事故(物損事故)
→ 交通の危険 6点
➤ながらスマホで追突事故(人身事故)
人身事故の場合付加点がつき取消になるかも?
→ 交通の危険 6点 + 付加点数 9点
(治療日数30日以上3月未満)= 15点
▋ドライバーの運転行動から考える。
運転行動は、「認知」➤「判断」➤「操作」の3要素で行われています。
この3要素のどこかで運転者がミスを犯すと交通事故につながります。
では、運転中の「ながらスマホ」は行動の中でどこに該当するのしょうか?
運転行動の3要素 | 内 容 | スマホ操作 | |
▋ 認 知 | 視覚、聴覚などによって周りの状況を把握 | 脇見運転状態 | |
▼ | |||
▋ 判 断 | 認知した結果に基づいて、どのようにするか決定 | 見ていない | 発見遅れ |
▼ | |||
▋ 操 作 | 認知と判断に基づいて具体的な運転操作を行う。 | 回避操作なし | 回避操作 |
▼ | |||
▋ 結 果 | 交通事故の有無 | 衝突 |
間に合わず衝突 間に合っても誤操作かヒヤリハット状態 |
というパターンから見ると、認知ミスが大きな要素になっています。
▼ 参考 報道番組 (支援チームの講習について取材を受けた番組)
2020年5月17日 テレビ朝日系列のドキュメンタリー番組
「一瞬の代償 ~"ながらスマホ"に奪われた命~ 」が放送されました。下のボタンを👆すれば視聴できます。
▼ 外国の啓発動画
外国の啓発動画
米運輸省高速道路交通安全局の啓発「運転中のメール送受信の危険性を訴えるCM」原本は削除されています。
警察庁の調べでは、
➤平成28年中の携帯電話使用等に係る交通事故は1,999件発生しており、5年前(平成23年)と比較すると約1.6倍
➤スマートフォン等の画面を見たり操作したりして起きた事故(以下「画像目的使用の事故」という。)は、約2.3倍
▋平成28年中に死亡事故は27件発生しており、そのうち画像目的使用の事故は、17件と死亡事故全体の約63.0%を占めています。
公益財団法人 交通事故総合分析センターの調査研究では、右グラフのように、
画像目的が、
●H19年の約2.5倍と増加
●約94%は四輪運転者
となっています。
▼事故類型別
▼ スマホなどの携帯端末操作の事故リスクは12倍 |
運転中にスマホなどを操作することは、データ上からもやはり大きな危険行為であることが浮き彫りになっています。
アメリカの道路交通調査機関、バージニア・テック・トランスポーテーション・インスティテュートが今年1月に学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」で発表した車両3500台の、3年間に及ぶ記録映像を分析して自動車事故の発生要因を探った研究結果
●スマホなどの携帯端末の操作
運転中にスマホなどを操作することは、データ上からもやはり大きな危険行為であることが浮き彫りになった。運転しながらのスマホ操作で事故リスクは12倍にもなるということだ。
●極端な感情の乱れ
運転中の怒りや悲しみ、泣き叫び、あるいは並走しているドライバーを挑発するなどの極端な感情の乱れもまた、当然のことながら事故リスクを高めている。平静時のドライブに比べて事故の危険は9.8倍にも高まる。
█ 指導方法
運転中の「ながらスマホ」の指導には、座学・機会教養時での指導と実技指導の二つがあります。
▼座学・機会教養時(交通事故発生した場合等)での体験指導
~ 受講者の速度に対する停止距離の認識確認とスマホ操作等による体験検証 ~
▼実技による体験指導と検証
~ 車を使用して通常の急制動体験とスマホ操作しながらの急制動体験時の比較検証 ~
▼ 指導前の考え方
先に説明しましたように運転行動は、【認知】【判断】【操作】の3要素です。
この3要素は瞬時に判断して行動しなくてはなりませんが、人間には反応時間がありこれを
ゼロにすることは不可能です。また車を走行させている場合は急に車を止めることはできず必
ず停止距離というものが存在します。
まず、その点を意識させながら指導することが重要です。
また、ながらスマホ運転の指導は、【認知】できていない状態での速度に対する距離を意識させる必要があり、下記表はその状態を計算したものです。
脇見時間を2秒→ 人が脇見をした場合 危険に感じる時間
速度5km~80km時の換算表
▼ 座学・機会教養時での体験指導方法
「車は急に止まらない」ことを意識してもらうため、原点回帰講習用「反応時間測定&停止距離計算」ツールを使って【認知】【判断】【操作】の体験指導をさせてください。
……当支援チームの原点回帰講習時では実技講習前に必ず行っております。
パソコンやスマホで使えますので、Webページで保存またホーム画面に登録しておけば指導・教養場面ですぐに活用できますので登録しておくと便利です。
█ 原点回帰講習用「反応時間測定&停止距離計算」の特徴
▼ 反応時間測定と停止距離計算が一画面でできる。
● 反応時間測定を10回にして測定時間を短縮
● 反応時間結果に基づいて、
➤ 低速時 5Km/h
➤ 中速時 40Km/h
の両方の空走・制動・停止距離が表示される。
➤摩擦係数、速度の変更ができる。【再計算】可能
● 反応時間を変更して再計算も可能
● 再測定も可能
▼指導方法~ 座学での「車は急に止まらない」ことの意識付け
❶ 停止距離の意味を質問する。(認識度調査)
ドライバーが危険だと判断し行動してから車が停止するまでの移動距離
➋ 停止距離には2つの距離があることの質問(認識度調査)
「空走距離」と「制動距離」
・ドライバーが危険だと判断してからブレーキをかけるまでの距離(空走距離)
・ブレーキがきき始めてから停止するまでの時間(制動距離)
➌ 「反応時間測定&停止距離計算」ツールを使う(検証)
・スマホ画面に結果が表示されますが受講者に見せずに下記➍について質問してください。
➍ 速度5Km/hと40Km/hの停止距離を質問(意識度調査)
速度5Kmと40Kmではどれぐらいの停止距離が必要か?また意識をもって運転しているかを調査するため右画像のように記入させたのち検査結果内容を伝え記入させてください。
▌反応時間測定後の停止距離予測と計算結果
【支援チーム】
停止距離の意味を明確に答えられる人は本当に少ないです。
ということは、「車は急に止まらない」ことを意識して運転しているドライバーが少ないのではないでしょうか… ➤車間距離が狭い。バック時の速度が速い。➤追突事故やバック事故の多発につながっているのではありませんか?
▼下記表は、スマホ操作時の急制動体験をした9名の反応時間による計算結果
❶ 「反応時間測定&停止距離計算」ツールを使っての通常測定結果
「支援チーム」予測停止距離の回答を見てみますと、速度5Kmでは結果より多めの停止距離また40Kmでは結果より短めの停止距離の回答がみられます。
❷ 「反応時間測定&停止距離計算」ツールを使ってスマホ操作時の測定結果
~ 指定の文書内容をスマホで入力しながら反応時間を測定
●通常の場合と比較して0.3秒前後反応時間が増える。
●停止距離で見ると、5Kmでは約50cm、40Kmでは約4m距離が延びる。
▼反応時間測定と停止距離計算
▼スマホ操作時の反応時間測定と停止距離計算
▌測定・検証後の指導
反応時間測定は指操作での結果であること。足での操作では、さらに時間がかかる。
一般に言われている反応時間は0.75秒で、❶及び❷の指操作の平均より約0.2秒時間がかかる。
ことを指導してください。
▼参考- 下記表は、一般に言われている反応時間0.75秒での結果
●スマホ操作による結果❶の平均反応時間0.58秒(スマホでの平均反応時間)と0.75秒(一般に言われている反応時間)との差は 0.17秒
スマホで入力しながらの平均反応時間は0.92秒に上記反応時間の差0.17秒をプラス
0.92秒+0.17秒=1.09秒 として計算
▼ 実技による体験指導と検証
座学指導で検証した停止距離が実際に車を運転して急制動をした場合どれだけの距離で止まれるか?また、運転中の「ながらスマホ」時はどうか?を受講者に体験してもらう実技講習です。
▋実施方法
講習時の事故防止を考えて、通常走行の40Km/h前後ではなく、発進時の急制動体験とした方がいいでしょう。できることなら補助ブレーキのある車を使用してください。
▼使用機材
・防犯ブザー 1個
・計測用メジャー 1個
・巻き取り用メジャー 1個
▶右の動画は、通常の急制動体験とスマホを使った「ながら運転」時の急制動体験動画です。
参考にしてください。
❶ 通常での急制動体験結果(受講者9名の結果)
□枠内は、各人の反応時間に対する計算上の停止距離 □赤枠内は、実車での検証結果
➋運転中の「ながらスマホ」での急制動体験結果(受講者9名の結果)
この実車による検証は、スマホ操作時音を聞いての検証ですが、前車の急停止やブレーキ燈を見ての検証であればさらに停止距離が延びます。その点を受講者に指導しておいてください。
【支援チーム】
▼急ブレーキを踏めない人が多い。
上の❶の実車検証を見ていただいて分かると思いますが、座学での検証結果以上に停止距離が長い人は、
急ブレーキが踏めていません。(運転姿勢が悪い、日頃急ブレーキをかけたことがない等)
▼アクセルとブレーキの踏み間違え防止
上記の実車講習を実施する場合、踏み替え時検証の前にブザーの音を聞かせて、アクセルからブレーキの
踏み替えをさせてから実施してください。(あがり症のひとは踏み間違う恐れがあります。)
【支援チームより】
上記「ながらスマホ」体験講習は、追加講習となりますので講習依頼時にお申し出ください。
通常の原点回帰講習時間より30分長くなります。
原点回帰講習等に関するお問合せは、
大阪香里自動車教習所 安全運転管理支援チーム
電話 072-831-0668
大阪府寝屋川市木屋町13-5
まで、ご連絡ください。