トラックのバック事故を考える
~ 行動と理由・根拠から考えてみる ~
運送会社での多発事故はバック事故です。
トラックの運転は「認知」「判断」「操作」の順番で行われ、バック事故の大半は、認知ないし判断の誤りが主原因で発生しています。
認知と判断の誤りを防ぐことができれば、バック事故の大半を減らすことができます。
現在、人間よりもITを活用した機械の方が、認知・判断を正確に行うことができるとの期待から各メーカーでは自動運転・無人運転の実現むけ研究開発が行われていますが、”事故責任は製造メーカー”にならない限り、ドライバーは必要不可欠です。
では、ドライバーにバック時の「認知」「判断」の必要性と、正しい実践行動を意識させる指導方法を考えることが必要になります。
「認知」➤バック先における衝突物等の有無を判断するための情報収集
「判断」➤自分の考えとして、このままバックしてよいか?悪いか?を決めること。
「注意」➤生理学上の注意は、脳が多数の情報の中から認知すべき情報を選択すること。
事例 団体での原点回帰受講者その後のバック事故
▌同じ場所でのバック事故
前回、右バック駐車した際、右駐車スペースラインを意識し、左側方のタンクがあるので切返しを行ってバックしたが、今回は、前回バックできたので右ラインのみを意識し、停止してバックモニターの確認をせずバックしたところ、トラック後部左角が貯水タンクに衝突し破損させたもの。
正しい行動は理解していても、実践できなければ意味はなく最低限、ポイント・ポイントで停止してバックモニターを確認しておれば事故に至ってなかったでしょう。
「不注意」・・・つまり注意していなかった、注意が足りなかったということで、
また「注意」は・・・心を集中させて気をつけることです。
この「注意」に目を向けさすには、最低限、バック行動時に、注意すべきポイント・ポイントで停止して「認知」「判断」を習慣づけることが必要だと私どもは考えています。
バック事故を防止するには、図の①~④の4つのポイント地点での行動を意識し実践する必要があります。(図は左バック駐車となります。)
左バック駐車時、図①~④地点での
➤「行動」をア~エから また ➤「理由・根拠」をA~Dから選んでチェックを入れてください。
バック駐車行動
ア 二段階停止 最後は2~3m手前で停止
イ 停止して駐車スペースの確認
ウ 安全確認してからバック
エ 切り返して真っ直ぐバック
バック駐車行動の理由・根拠
A 見えなくなる死角を事前に見る。
B 車は急に止まらない。
C ・自身の車両感覚は曖昧
・バックは真っ直ぐバックが基本
・左右の衝突リスクを無くす。
D ・見落としを補う。
・最後の安全確認・損傷の軽減
バック駐車行動の選択▼✅をつけてください。
理由・根拠の選択
▼✅をつけてください。
バック駐車①~④の行動
・バック駐車行動
ポイント① イ 停止して駐車スペースの確認
ポイント② ウ 安全確認してからバック
ポイント③ エ 切り返して真っ直ぐバック
ポイント④ ア 二段階停止
最後は2~3m手前で停止
バック駐車①~④行動をする理由・根拠
・バック駐車行動
① A 見えなくなる死角を事前に見る。
② B 車は急に止まらない。
③ C ・自身の車両感覚は曖昧
・バックは真っ直ぐバックが基本
・左右の衝突リスクを無くす。
④ D ・見落としを補う。
・最後の安全確認・損傷の軽減
結果はどうでしたか?
▼バック事故報告書の内容から考えてみましょう。
報告書に、バック事故時の行動と、衝突部位、衝突物があれば、おおよその原因と指導ポイントがわかります。
▼バック事故時の状況
1 自社駐車場で転回するときバックモニターを見ているが今回は気の緩みもありバックモニター、後方確認せずバックしセンターのドア扉のガラスを破損
2 自社駐車場からバックで出ようとしたところ停車していた車に気づくのが遅れ、自車後部左角が相手車両の左側面前に衝突
3 自社駐車場内で車を移動させようとバックした際、ハッチバックを開けていたレンタル中の車に気がつかず後方確認不足のため接触
4 自社前でバックで道路から駐車場に入る際、駐車場入り口の鉄柱に後部左角を衝突
5 自社駐車場にバック駐車する際、高さ確認を怠ったため車両右上が自社建物の軒に衝突
行 動
移動中
(バック)
車庫出
(バック)
移動中
(バック)
道路から
バック進入
車庫入
(バック)
衝突部位
後部左角
後部左角
後部左角
後部左角
上部
衝突物
家屋等
車
車
信号・街灯・柱等
家屋等
▲バック事故報告書の内容を見ると、ほとんどのドライバーは一連の流れにのった行動で、
見たつもりの安全確認、だろうという先入観で
▼ポイント❶ ▼ポイント❷
「停止して駐車場所・スペースの確認」 「安全確認してからバックする。」
▼ポイント❸ ▼ポイント❹
「切り返して真っ直ぐバックする。」 「2~3m停止し安全確認をする。」
を意識せずに行動した結果となっています。
▌衝突部位の約70%が後部であり、真後ろが約50%を占めていることからも明らかです。
これら4つのポイントでの行動を習慣化させるには、下記図の行動を
❶ 何で! なぜ? の理由と根拠を体感させる。
❷ 事業所ぐるみで実践
→ 特に指導者・幹部は日頃から❶~❹を実践している後ろ姿を見せる。
ことが重要なポイントとなります。
▼図にすると
乗用車
█の①~④が駐車時の行動
█内が理由・根拠
となり、バック事故防止の原点回帰講習内容となります。
貨物車(トラック)
の場合も同じ
です。
█の①~④が駐車時の行動
█内が理由・根拠
となり、バック事故防止の原点回帰講習内容となりま
す。
注:貨物車の場合は、下だけではなく高所部分も含まれます。
▼写真では
▼4つのポイントを意識したバック駐車
▼ 原点回帰講習に含まれる上記以外の実技講習内容
乗用車の場合
➤ 左側端感覚
➤ 信号待ち・渋滞時の前車との車間距離
➤ 内輪差、外輪差(要望により)
➤ バックモニター視認範囲と距離検証
(訪問講習時、持ち込み車両)
貨物車の場合
➤ 左側端感覚
➤ 死角⇒ 高所障害物死角
➤ 内輪差・外輪差
➤ 信号待ち・渋滞時の前車との車間距離
➤ バックモニター視認範囲と距離検証
(訪問講習時)
▌「ハンドル操作別 事故分析ツール」Excel版を2021.12公開しましたので参考にしてください。(車種別イラストを入れ替えることで、トラック(基本はトラック画像)、乗用車にも対応しています。)
ハンドル操作と衝突部位から指導点を探る。