事故データから見る
ハンドル操作と衝突部位
~ その1 自車認識から考える 貨物車(トラック)編 ~
運転は、認知、判断、操作の繰り返しです。
下記図は、某運送会社の交通事故分析を更に一歩進めてハンドル操作行動と衝突部位を追加したものです。
この図を見て分かりますように、右左折やバック等ハンドルを切る。バックする。など方向が変わる。場面が変わる。ときは、確実な安全確認と見るべき確認ポイントを意識し行動する必要があること分かります。
注1:直進時の41件中、前面(左角、中央、右角)の24件は追突事故となり、それ以外の左右や上部衝突は、安全不確認や曖昧な車幅感覚で進行したことにより発生しています。
注2:操作なしは、駐停車中や降車時の措置不備によるものです。
ハンドルを切って左右への前進時の衝突部位(83件)は、
▌左へ前進が54件(65%)を占めている。
▌そのうち左巻き込み31件(左側面前3件、
左側面15件、左側面後7件、後部左角6件)で約60%となっています。
また、
▌右へ前進が29件(35%)を占めている。
▌そのうち右巻き込み12件(右側面前2件、
右側面4件、右側面後1件、後部右角5件)で41%となっています。
●左右へハンドルを切っての巻き込み衝突は、43件(52%)
●リアーオバーハング(尻振り)による衝突は、 16件(約20%)
約70%は、内輪差による巻き込みと、リアーオバーハング(尻振り)が占めています。
これらの事故はなぜ起こるのでしょう?
➤内輪差やオバーハングを意識していない?
➤安全確認ポイントを見ていない?
等だけでしょうか??
▌新たに「ハンドル操作別 事故分析ツール」Excel版を公開しましたので参考にしてください。(車種別イラストを入れ替えることで、トラック(基本はトラック画像)、乗用車にも対応しています。)
▼ドライバーは、自分が運転する車を短く感じている。
➤ 提案 ➤ 自社ドライバーに下記「自車認識度調査」をしてみるのもひとつです。
自車認識度質問内容
※注意点
予測は、ボールペンで記入させ訂正させないようにしてください。
▌事故防止の基本は自車認識指導から
分かっていそうで知らないのが自車の寸法です。
自車の寸法➤ 物を見る際の判断基準です。
下記グラフは、ドライバー30名に対し講習前に実施した自車の認識寸法と車検証の寸法との誤差を比較したグラフになります。n=30
~ 車を短く感じた状態でのハンドル操作への影響は?
早くハンドルを切りすぎるのではないでしょうか?
このページは、当支援チームが実技講習実施前に行っていますバック駐車時の安全度テスト
私どもが応対する管理者の方は「大きな事故はほとんどないが、バック事故が減らない。」との話をよく聞きます。
バック事故のほとんどは、ドライバーの不注意によって発生し、バック事故を起こすドライバーは「見ていなかった。」「電柱があるのは知っていたが右側に注意がいってしまった。」等、不注意の言葉で済まそうとします。
「不注意」・・・つまり注意していなかった、注意が足りなかったということで、
また「注意」とは・・・心を集中させて気をつけることです。
この「注意」に目を向けさすには、日頃何げない行動を何で? なぜ? をドライバー自身に考えさせ、その内容を検証や見極めなど体感型の実技講習から理解してもらうことが必要だと支援チームは考えています。
その第一歩として
下記に「 ▌バック駐車時の安全度テスト」がありますので一度試して見てください。
「行動」がバック時の指導ポイントで、「理由・根拠」が原点回帰講習の実技内容となります。
バック事故を防止するには、図の①~④の4つのポイント地点での行動を意識し実践する必要があります。(図は左バック駐車となります。)
左バック駐車時、図①~④地点での
➤「行動」をア~エから また ➤「理由・根拠」をA~Dから選んでチェックを入れてください。
バック駐車行動
ア 二段階停止 最後は2~3m手前で停止
イ 停止して駐車スペースの確認
ウ 安全確認してからバック
エ 切り返して真っ直ぐバック
バック駐車行動の理由・根拠
A 見えなくなる死角を事前に見る。
B 車は急に止まらない。
C ・自身の車両感覚は曖昧
・バックは真っ直ぐバックが基本
・左右の衝突リスクを無くす。
D ・見落としを補う。
・最後の安全確認・損傷の軽減
バック駐車行動の選択▼✅をつけてください。
理由・根拠の選択
▼✅をつけてください。
バック駐車①~④の行動
・バック駐車行動
ポイント① イ 停止して駐車スペースの確認
ポイント② ウ 安全確認してからバック
ポイント③ エ 切り返して真っ直ぐバック
ポイント④ ア 二段階停止
最後は2~3m手前で停止
バック駐車①~④行動をする理由・根拠
・バック駐車行動
① A 見えなくなる死角を事前に見る。
② B 車は急に止まらない。
③ C ・自身の車両感覚は曖昧
・バックは真っ直ぐバックが基本
・左右の衝突リスクを無くす。
④ D ・見落としを補う。
・最後の安全確認・損傷の軽減
結果はどうでしたか?
▼バック事故報告書の内容から考えてみましょう。
報告書に、バック事故時の行動と、衝突部位、衝突物があれば、おおよその原因と指導ポイントがわかります。
▼バック事故時の状況
1 自社駐車場で転回するときバックモニターを見ているが今回は気の緩みもありバックモニター、後方確認せずバックしセンターのドア扉のガラスを破損
2 自社駐車場からバックで出ようとしたところ停車していた車に気づくのが遅れ、自車後部左角が相手車両の左側面前に衝突
3 自社駐車場内で車を移動させようとバックした際、ハッチバックを開けていたレンタル中の車に気がつかず後方確認不足のため接触
4 自社前でバックで道路から駐車場に入る際、駐車場入り口の鉄柱に後部左角を衝突
5 自社駐車場にバック駐車する際、高さ確認を怠ったため車両右上が自社建物の軒に衝突
行 動
移動中
(バック)
車庫出
(バック)
移動中
(バック)
道路から
バック進入
車庫入
(バック)
衝突部位
後部左角
後部左角
後部左角
後部左角
上部
衝突物
家屋等
車
車
信号・街灯・柱等
家屋等
▲バック事故報告書の内容を見ると、ほとんどのドライバーは一連の流れにのった行動で、
見たつもりの安全確認、だろうという先入観で
▼ポイント❶ ▼ポイント❷
「停止して駐車場所・スペースの確認」 「安全確認してからバックする。」
▼ポイント❸ ▼ポイント❹
「切り返して真っ直ぐバックする。」 「2~3m停止し安全確認をする。」
を意識せずに行動した結果となっています。
▌衝突部位の約70%が後部であり、真後ろが約50%を占めていることからも明らかです。
これら4つのポイントでの行動を習慣化させるには、下記図の行動を
❶ 何で! なぜ? の理由と根拠を体感させる。
❷ 事業所ぐるみで実践
→ 特に指導者・幹部は日頃から❶~❹を実践している後ろ姿を見せる。
ことが重要なポイントとなります。
▼図にすると
乗用車
█の①~④が駐車時の行動
█内が理由・根拠
となり、バック事故防止の原点回帰講習内容となります。
貨物車(トラック)
の場合も同じ
です。
█の①~④が駐車時の行動
█内が理由・根拠
となり、バック事故防止の原点回帰講習内容となりま
す。
注:貨物車の場合は、下だけではなく高所部分も含まれます。
▼写真では
▼4つのポイントを意識したバック駐車
▼ 原点回帰講習に含まれる上記以外の実技講習内容
乗用車の場合
➤ 左側端感覚
➤ 信号待ち・渋滞時の前車との車間距離
➤ 内輪差、外輪差(要望により)
➤ バックモニター視認範囲と距離検証
(訪問講習時、持ち込み車両)
貨物車の場合
➤ 左側端感覚
➤ 死角⇒ 高所障害物死角
➤ 内輪差・外輪差
➤ 信号待ち・渋滞時の前車との車間距離
➤ バックモニター視認範囲と距離検証
(訪問講習時)