貨物車の車両特性に起因する事故と指導方法
~ リアーオバハング、内輪差、外輪差 ~
ドライバーである私たちは、自身の身長等を知っています。
それと同じように、自分が運転する自動車の寸法(車長、車幅、車高)も知っておく必要があり、これは運転時モノを見る際の判断基準になります。
すなわち・・・自車認識は、判断基準の基本なのです。
この判断基準の基本を、意識させることで、車両特性による事故も減少させることができるのではないでしょうか。
判断基準の基本から車両特性の指導方法を考えると、
トラックは乗用車と比べて車長が長い。車幅が広い。車高も高い。最も差があるのが車体の長さです。
真っ直ぐな道を走る分には乗用車と大差ありませんが、交差点を右左折する際、施設への出入り、構内での移動や、また出発する際の左右方向への前進時には車長が長いことに起因する安全確認すべき箇所が多岐にわたります。
特に、長さからくる「内輪差」「外輪差」「リアーオバーハング」を意識して安全確認をしないと、内輪差による巻き込み事故やリアーオバーハング(ケツ振り)事故等になる恐れが高くなります。
下記図は、トラックのハンドル操作別衝突部位の図です。
この事故データに基づいてドライバーの車両認識度及び車両特性から指導方法を考えてみます。
▌新たに「ハンドル操作別 事故分析ツール」Excel版を公開しましたので参考にしてください。(車種別イラストを入れ替えることで、トラック(基本はトラック画像)、乗用車にも対応しています。)
ハンドル操作別衝突部位から指導方法を考える。
関連項目 ▼ バック事故対策 意識度・認識度調査 ~ 質疑・回答、集計・結果➠Excel仕様ツールあり~ new ≫ バックカメラ(モニター)付車両(貨物車)の指導方法~ new ▼ヒヤリハット分析から見た指導方法6-2(信号左折時)に対する指導方法 その3(左折) |
▌前進時事故(124件)のうち半数は、内輪差事故とリヤーオバーハング事故
左右前進時の内輪差事故は、43件➤ 全事故の21%、前進時事故(124件)の35%
〃時のリアーオバーハング事故(尻振り)は、16件➤ 全事故の 8%、前進時事故の13%
を占め、内輪差+リアーオバハング事故を合わせると全事故の約30%発生し、また前進時事故全体から見ると、48%も占めています。
このことから当然として内輪差とリアーオバハングを意識させる指導が必要となります。
ドライバーの車両認識度
知っていそうで知らないのが車両認識です。
一度、自社ドライバーの車両認識度を調査してみてください。このページでは車両特性による指導方法を解説しますので、自社の車両認識度等の確認したい方は、下のボタンをクリックして内容を確認のうえ実施してみてください。
▌上の車両衝突部位図から何が見えてくるか?
衝突部位=ドライバーが衝突するか否かの安全確認や判断ミスによって発生したカ所
ハンドル操作別にすることで、ドライバーの見落としや安全確認しなかった箇所がわかり、数値化することで、最重点指導ポイントを探ることもできます。
特に前進時の左右前進(83件)では、内輪差とリアーオバハング事故が71%占めています。
解説は、前進時のハンドル操作別(直進時、右左折時)に分けて説明します。
●前進時は、➤直進 ➤左右前進時のリアーオバハング、内輪差の順に検討します。
直進時の事故は41件発生し、全事故(208件)の20%を占めている。
相手は、車の22件が最も多く、次いで屋根、軒等の高所障害物7件、施設設置物3件の順となってます。だだ、前部衝突22件のうち19件は、追突によるものです。
◆直進時のうち、追突を除く衝突件数は22件で、これを車両の左側と右側に別けてみると、
左側13件(60%)、右側5件(23%)となっています。
▌皆さんは、どう指導しますか?
~ 前をよく見てたら避けれたのでは?
と質問すると思います。そのとおりなのですが、その根底には
➤自身が運転している車両を認識していない。(寸法等、車長・車幅・車高)
➤車両特性がもたらす弊害
・車両の車幅感覚、左側端感覚
・左右上下死角やミラーの視認範囲
・ バックカメラの写る範囲
等、車両の寸法を含め理解していない。検証していない。また、自身が運転する車の車幅感覚の検証や見極めをしていないことが一つの要因にもなっています。
▼ドライバーに知ってもらうこと
❶車両認識(車長、車幅、車高)
❷車両特性(停止した状態からハンドルを左右一方を一杯切った状態で検証)
①後部左右角の最大はみ出し距離(リアーオバーハング)
②左右タイヤの最大巻込み距離と移動距離(内輪差)
③車両前部左右角の最大はみ出し距離と移動距離(外輪差)
❶と❷を知っておくだけで、運転時に活用できるのではないでしょうか?
▌新たに「ハンドル操作別 事故分析ツール」Excel版を公開しましたので参考にしてください。(車種別イラストを入れ替えることで、トラック(基本はトラック画像)、乗用車にも対応しています。)
ハンドル操作と衝突部位から指導点を探る。
・自車認識度 ・死角認識度調査とその体験検証(上下) ・車両左側端感覚 体験指導
が、必要です。(支援チームが行う原点回帰講習の必須項目内容です。)
下記写真・イラストを参考にしてください。
▼上下死角検証
ドライバーの人は死角の意味は知っていますが、自身の死角距離を知っている人は少なく、死角距離を短く感じています。
◆死角検証時は、身長差のある二名を選んで実施すると理解度も深まります。
・高い人→下の死角距離 短い
・低い人→ 〃 長い
・高い人→上の死角距離 長い
・低い人→ 〃 短い
◆高所死角検証を行う際は、バックモニターの写る範囲と併せて行うと効果的です。
バックモニターにも映らない場所▼があることを指導
❶左側の写真では、高所障害物が右側の上部に当たるように設置
❷中央写真 バックモニターを確認させる(写っていない。)
❷-2 高所障害物を写る箇所まで移動(車体後部からの距離を測定)
❸右ミラーを確認させ、高所障害物が写っているか確認させる。
俯瞰カメラ以外は、後部左右上部が写らない場所あります。
▼ ではどうするか?
図の①と④地点での行動を意識させると共に検証体験させる。ことが重要です。
①地点で停止確認していない人は、高所障害物を見落とす確率が高いのではないでしょうか?
④地点の2~3mで停止し後方確認する人は、事故を起こす確率も低くなります。
▼左右前進時(リアーオバーハング、内輪差、外輪差)
事故データから見ると、リアーオバーハング、内輪差、外輪差を意識せず安全確認もしなかった。動きながら、自分が見たい一点に集中した行動。等によって発生したことが窺われます。
・左右前進時の事故は83件発生し、全事故(208件)の40%を占めている。
・左右別では、左方前進時が54件(65%)、右方前進時が29件(35%)となっています。
・相手は下記表のとおり、左右とも車が最も多く36件、次いで屋根、軒等の高所障害物17件、壁・塀6件の順となっています。
▌下記表の左右前進時、衝突部位別、相手別を見て何が原因で、どのように指導するか?を考えてみてください。
~ 車の長さ、幅、高さがもたらす車両特性の弊害・・・内輪差による巻き込み、リアーオバハング及び外輪差によるはみ出しが事故に繋がっています。~
(前進時に実施した内容は省略)
・ドライバーに、実技検証で伝えること
❶自分が運転する車の左右後部の最大はみ出し距離(尻振り)
❷ 〃 左右内輪差(巻込み)の距離
❸ 〃 前部の最大はみ出し距離=前目視死角距離の活用
❹上記結果から目視確認順番
❺ポイント、ポイントでの停止しての確認
最低限、❶~❸を意識付けさせる必要があります。
どうでしょうか?上記❶❷❸を知って運転すれば、その方向に目が向きませんか?
一度、❶❷❸の事故を起こしていないベテランドライバーに安全確認順番を聞くのも一つだと思います。
➤左右前進時の主たる特徴
・□枠 ➡ 内輪差(巻込み)を意識していない。
・○枠 ➡ リアーオバハング(尻振り)を意識していない。
ことが考えられます。
▌事故になる原因は、停車場所から発進時ポイント・ポイントで停止してのミラー確認をせず、また無意識に近い状態で進行して発生しています。
▼下記図は、リアーオバーハング最大はみ出し時の
・内輪差 ・オバーハング(外輪差) を検証したもので、
安全確認順番を意識さすための検証結果です。
左方前進の場合の
安全確認順番
①前方&左右の安全確認
▼
②リアーオバハング右後部の確認
リアーオバハングの距離だけ進むと、後部右角の最大は見出しは、リヤーオーバンハングの1/4
▼
③内輪差の確認
内輪差は、ホイールベースの1/3
▼
④前方最大はみ出し時の確認
A車両のサイズ 長さ:8.38m 車幅:2.32m を検証
●ホイールベース:4.7m ●リヤオーバーハング:2.5m ●フロントオバーハング:1.2m
➤ 内輪差は、ホイールベースの1/3 とすると、1.6m
➤ リヤーオバーハングの最大はみ出しは、
リヤーオーバンハングの1/4とすると、63cm ➤検証では60cm
この時点での内輪差(後輪タイヤが内側に寄る幅)は、35cm
〃での 外輪差(前方右角のはみ出し)は、170cmで、最大右角はみ出しは1.93m(約2m)
ということになりました。
◆自車車両周回確認
(検証結果の距離を意識させるのと、危険箇所の確認を指導)
出発時、自車のはみ出し距離、巻き込み距離を意識した上で、自車車両を一周する。
➤隣接車両等との距離確認
下図のとおり自身の肩幅を把握した上で、後部角のはみ出し距離と隣接車との距離の差を考える。
➤その際、下や横だけではなく上の障害物の確認と観音扉の確認を行う。
4トン車の場合
後部左右のはみ出し距離は、45cm~60cmです。
▌バック駐車指導時に併用して行うと効果的です。
右図のバック駐車指導の際、車両を発進させる前に車両周回確認を取り入れてください。
バック駐車行動
① 二段階停止 最後は2~3m手前で停止
② 停止して駐車スペースの確認
③ 安全確認してからバック
④ 切り返して真っ直ぐバック
▼ 原点回帰講習に含まれる基本の実技講習内容
乗用車の場合
➤ 左側端感覚
➤ 死角
➤ ミラーを介した車両感覚(左、右、目視)
➤ 信号待ち・渋滞時の前車との車間距離
➤ 急制動体験
➤ 内輪差、外輪差(要望により)
➤ バックモニター視認範囲と距離検証
(訪問講習時、持ち込み車両)
➤ 内輪差・外輪差
➤ 4つのポイントを意識したバック駐車
貨物車の場合
➤ 左側端感覚
➤ 死角⇒ 高所障害物死角
➤ ミラーを介した車両感覚(左、右、目視)
➤ 信号待ち・渋滞時の前車との車間距離
➤ 急制動体験
➤ 信号待ち・渋滞時の前車との車間距離
➤ バックモニター視認範囲と距離検証
(訪問講習時)
➤ 内輪差・外輪差・リアーオバハング
➤ 4つのポイントを意識したバック駐車