貨物自動車向け「原点回帰講習」
原点回帰講習は、追突事故、出会い頭事故やバック事故、構内事故等を含めたあらゆる事故と車両に対応した基本講習です。
運転とは「人が車両を操り動かす。」ことです。
ドライバーの、「認知」➤「判断」➤「操作」(ハンドル、アクセル、ブレーキ)の3要素で行われており、この3要素のどこかで運転者がミスを犯すと交通事故に発展します。
~ 交通事故の85%は、認知ミスと判断ミスが原因といわれています。 ~
すなわちドライバーは一秒以内で「認知」「判断」「操作」を正しく行う必要があるのですが、この「認知」「判断」「操作」を過去の運転経験からくる自信や過信、また思い込みにより脇見をしたり、一部を省略したり、誤った考えで操作することで事故につながっています。この動かす人「ドライバー」と動かす物「車両」に焦点をあて、運転とは?を自ら考えていただく講習です。
業務中に発生する物損を含む交通事故を分析していますと、ドライバー側の原因として
➤人間には不可能なことがある。… 反応時間の存在やミラーを使った遠近感の難しさ。
➤見たつもりになった過信… 死角の存在
➤曖昧な車両特性の認識… 内輪差、外輪差
などの認識不足が窺えます。
私どもが原点回帰講習を通じて感じることは、ほとんどのドライバーが車両認識が曖昧、また自身の車両感覚の見極めや検証もなく運転していることです。
この検証や見極めができる講習が原点回帰講習です。
この原点回帰講習にバック事故防止指導を組み入れると効果的です。なぜならバック駐車行動は、運転操作の基本と安全運転の基本が集約されているからです。
★ 詳しくは、「バック事故と車両感覚 ~車両感覚と原点回帰講習~」をご覧ください。
右のグラフを見てください。
平成29年中に発生した事業用貨物自動車の交通事故形態と件数です。
この事故形態・件数は、人身事故であり駐車場で擦った等の物損事故までカウントされていません。
私どもが実技講習の依頼を受ける物流企業の物損事故を含めた事故形態(壁に擦った等を含む)を見てみますと、
▶バック事故が、全発生件数の50%前後
参考- バック事故分析ツールdownload企業の全発生件数の50%はバック事故です。
▶自社や顧客先駐車場・構内が、全発生件数の50%前後占めてます。
▌原点回帰講習はバック事故防止を絡めると効果的です。
まずバック事故を分析しどの部位の衝突が多いか?
それに対応した指導と実技による体験が効果的です。
H29.4にExcel仕様の「バック事故&指導ツール」を無償公開しましたのでバック事故の分析と指導に活用してください。(衝突部位から見た分析と指導
衝突部位▶ドライバーが障害物を見落としたか?判断を誤ったか?ということになります。
▌「ハンドル操作別 事故分析ツール」Excel版を2021.12公開しましたので参考にしてください。(車種別イラストを入れ替えることで、トラック(基本はトラック画像)、乗用車にも対応しています。)
ハンドル操作と衝突部位から指導点を探る。
右の動画は、バックモニターのないトラックのバック駐車(経験年数の少ないドライバー)
左側➡日頃のバック駐車
右側➡原点回帰講習後のバック駐車
~見比べてどのように感じますか?また、どのように指導しますか?
★ 動画のドライバーは、日頃から駐車する際、車から降りて駐車スペースの確認するよう指導をされています。
安全運転管理・運行管理者のための実務月刊誌 月刊 自動車管理 2018 3月号 で
「原点回帰講習」「バック事故防止講習」が紹介されました。
貨物車、バス向けの原点回帰講習も普通車と同じく、
●「自分が運転する車を知る。」●「見えなくなるなる死角を事前に見る。」●「自身の車両感覚はあてにならない。」●「車は急には止まらない。」ことを理解していただくための講習です。
事故 原因 |
信号 標識 無視 |
停止 徐行 |
安全 確認 |
速度 |
車間 距離 |
合図 | 死角 |
車両 感覚 |
操作 誘導 |
▼ | ▼ | ▼ | ▼ | ▼ | |||||
原点 回帰 講習
|
自身の反応時間
と空走(時間)距離検証 |
≫ |
低速時 停止 距離 体験 |
停車時 の 車間 距離 体験 |
自車 の認識 + 死角 の認識 |
車両 感覚 |
|||
③ |
④ |
① |
② |
■ 原点回帰講習は、自社で実施できる講習です。
下の車両認識度、死角、車両感覚は集団講習結果の内容です。
▼ 座学と実技を併せた講習や希望の講習時間にも対応します。
ただし、
≫業務中の事故発生実態・内容を確認させていただきます。⇒下図の講習資料に使用します。
≫一時間等短時間の場合は、実技部分を分割して行いますので数回の講習が必要です。
≫選抜ではなく参加者全員の原点回帰講習の場合も実技部分を分割して行いますので数回の講習が必要です。
①-1 ≫ 自車の認識度
自車寸法等の認識がなくして車を安全に走行させることはできません。
▼ 2t自車認識度 13名
≫ 車高・車幅についての認識度は、ほぼ正確であるが、車長は平均で70cm小さく感じている。
①-2 ≫ 自分が運転する車の死角 (前後左右・・・ 死角距離の活用、見えなくなる死角を事前に見る。)
▼ 2t死角認識度 13名
≫ 死角距離については全体的に短く感じている。特に、前及び左の死角とミラーの視認距離は1mの差がある。
② ≫ 自身の車両感覚を知る。 ( 過信の払拭・・・ 車両感覚の曖昧さを知ってもらう。)
②-1 左側端感覚 左ミラーを畳んで左ラインから50cmに付ける。( ミラー注視による前方不注視防止 )
②-2 左右ミラー後退と目視後退
▼2t車両感覚 後退 選抜5名
●右ミラーを使っての後退と
目視での後退
●左ミラーを使っての後退
⇒ 右後退
・・・目視の方が誤差が少ない。
⇒ 左ミラー後退
・・・誤差が大きく衝突者もでる。
▼バックモニター 死角検証(俯瞰カメラを除く)
(全てが見えているわけではない)
▼バックモニターでの後退検証
~ モニターに写る障害物をどこに合わせるか
▼4t車両感覚 モニター後退 選抜4名 (条件~ ポールから2m手前に停止)
⇒ 頭と下では約30cm の誤差がある。
⇒ ドライバーの後退時速度等で誤差がバラバラである。(7インチモニターと目視との違い)
≫ モニターがあっても1~2m手前で停止しモニターの再確認の必要性を理解させる。
講習の感想 ( 団体講習 車両認知度、死角、車両感覚 )
≫車輌から対象物までの距離及びミラーと目視予測と実測の違いを再認識した。
≫車両感覚を知る講習は感覚と実測値では大幅な差があることを再認識した。
≫実習内容がわかりやすく今後の運転の勉強になった。
≫自分の予測と実際の距離に誤差があることがよく分かった。
≫実測値が予想より大きいことに驚いた。
≫感覚に頼っていたことが多かった。
≫思いのほか死角の恐ろしさを実感した。
≫自己の感覚は実際のものと違うことが明確にわかり、知識の重要性を再認識した。
≫実習が多く、良い体験ができた。
≫予測値よりも実測値との誤差が大きく違ったのに驚いた。
≫ミラーの死角が良く分かった。
≫感覚の誤差が多いのに驚いた。
≫実習ができて良かった。
≫とても分かりやすく、改めて車の死角を再認識できた。
≫死角や距離感の説明がわかりやすく良かった。
≫自分の思っている死角の範囲が広いことに少し驚いた。今回はそれがわかってよかった。
≫ ビデオの鑑賞だけでなく、実技等の講習もあり非常にためになった。
≫楽しく講習ができて良かった。
≫普段気にしていない点に気付けて良かった。
≫死角がどのくらいあるのかや、内輪差等、感覚に頼っていたが実際と違うことがあることがわかってよかった。
≫勉強になった。
≫知らなかったこともあってためになった。
≫自分自身の感覚と、実際の計測の違いが分かるなど、講習を受けて自分を振り返ることができた。
≫死角や自分がどれだけ運転席から見えていないかなどの範囲を改めて知ることができた。
≫車輌のピラーが作る死角は思っていたより大きいと改めて痛感した。
③ 低速時の停止距離体験(車は急に止まらない。)
≫前後及び構えと踏み替え時検証
右の動画は、年齢20代 指操作での平均反応時間0.48秒
▼大型車 時速4km/h
≫計算上の停止距離 62cm
(空走距離 53cm + 制動距離 9cm)
≫体験- 踏み替え 133cm
≫ 構え 87cm
車は急に止まらないことを理解していただきます。
低速であっても“車は急に止まらない。”ことを体験し理解しておれば、見通しの悪い交差点や施設から出る際の行動も変わります。
▼実技講習前の座学時に
原点回帰講習用
「反応時間測定&停止距離計算」ツールを使用「車は急に止まらない」ことを意識してもらうための事前指導・教養ツールです。
特徴として、反応時間測定と停止距離計算が一画面で測定と計算ができます。(30.4公開)
▼トレーラードライバーの停止距離体験の感想
➤手前で停止するのは良かったと思います。
➤思ったより車が停止するまで距離が長いので安全な速度で運転したい。
➤空車でも停止距離が割と長いので積んだ時の距離を考えるとスピードを出さずにしようと思います。
➤急ブレーキを踏んでも、ビタッ‼︎と止まれず前進、後進の車間は余裕を持って移動する。
➤思っていたより空走距離が長くスピードを出さないように運転したい。
➤車は急に止まらないので早めの予測が必要
➤制動距離をいかに短くするか等を考え、スピードを抑え危険等を早く見つけていこうと思う。
➤思ってるより停止距離が小さかった。
➤停止までの距離がわかりました。
➤自分で思っていたより停止距離が長いと思った。速度を控えめにすべきだ。
➤空車、積載時では距離が違ってくるので十分に注意する。
④ 前車との車間距離体験(他車に威圧を与えない)
~ 発進追突の防止も兼ねています。 ~
≫トラックの場合、ほとんどの人が前車の立場になると威圧感を感じています。
注:右は講習ノートの一部を抜粋したものですが、上の画像とは別です。
その他~ 追加(他車との関係を考える)
▼ 他車との関係(車線変更の意識づけに有効) ・ ミラー確認 ・合図の見え方
~ 自車と他車の立場に立った視認検証
※事故形態に応じた駐車場や構内でできる指導方法を提案します。
貨物自動車向けの講習内容
▼訪問指導が中心です。
依頼された企業様の駐車場や構内で日頃使用されている車で実施します。
業務運転開始前講習 個別
ドローン撮影の死角講習風景
▼対象は、
管理者・指導者向け、社員全体向け及交通事故惹起者の人を対象としています。
※ 管理者・指導者向け、社員全体向けの実技講習は「原点回帰講習」となります。
※ 交通事故惹起者の方は「原点回帰講習」と事故内容に対応した実技講習で、路上講習を行う 場合は業務車(貨物車)と講習車(普通車)を使用します。
≫ 貨物車の同乗指導の場合は、こちらが用意したドライブレコーダを装着させていただきます。
また、事故内容等によりメガネカメラと併用します。
≫ ドライブレコーダを使用した場合は、録画動画はご希望によりお渡しします。
▽社員全体向け原点回帰講習風景
死角・・・死角距離の長さ等を体験~ほとんどの人が短く思っている。実測とのギャップを知ってもらいます。
車両感覚・・・ 自身の車両感覚はあてにならないことを体感していただきます。
団体講習は、依頼企業様の事故データを基に多発事故を中心に、数年に渡って意識付けを兼ねて実施します。
▽新規採用者・再教養・交通事故惹起者向け個人講習
講習は、日頃業務で運転している車両を使用して下記の手順で実施します。
見極め診断(同乗) ≫ | 診断結果説明 ≫ | 原点回帰講習 ≫ | 診断結果に基づいた 反復指導(同乗指導) |
▼同乗指導
▼第三者の目から見た映像を元に自身の運転を考えてもらいます。
路上講習前に
▶原点回帰講習を実施
追突
防止
車間距離指導は普通車になります。
▼ 講習時には講習内容に対応した「講習ノート」をお渡しします。
管理者・指導者向け、社員全体向け、交通事故惹起者向けがあり、
講習内容に対応した講習ノートです。
▶ 以後、自社で実施する際にノートが必要な場合は、原紙をお渡ししますのでお申し出ください。
▼貨物自動車向け「原点回帰講習ノート」個人・基本版
この内容は基本版です。
講習内容、要望等により追加します。
交通事故惹起者用は26ページ版が基本となります。
「交通事故分析」等により抽出された事故形態に対応した対策の提案をします。
当支援チームは、依頼企業様と一緒になって事故防止案を検討します。
どの様にすればよいか? 迷ったらご相談ください。検討、提案させていただきます。
参考 バック指導を考える。(西日本JRバス(株)バック時の指導)
▼安全を最優先する企業は、原点に重きを置いた指導がなされていました。
一例を挙げますと、西日本JRバスでは、バック事故はほとんど発生していないとのことです。
全車にバックモニターが設置されていますが、バックする際は停車位置4~5m手前で一時停止し、目視とバックモニターで再確認したのち停止位置まで微速でバック。
このことは、安全の基本『停まる。確認する。やり直す。(無理をしない)』を実践しているからでないでしょうか。
下の動画は駐車スペース確認後のバック駐車行動の動画です。どの段階で停車し、目視とバックモニターを確認しているか参考にしてください。確実な安全確認は停止しての確認が一番です。
バック事故を防止するためには、停まっての安全確認が確実な安全確認となります。
上の動画で見ていただいてお分かりかと思いますが事故を起こす前にもう一度、原点に返っての指導『原点回帰講習』をつうじて自分自身・車というものを再確認するのも一つの指導方法です。
▌「ハンドル操作別 事故分析ツール」Excel版を2021.12公開しましたので参考にしてください。(車種別イラストを入れ替えることで、トラック(基本はトラック画像)、乗用車にも対応しています。)
ハンドル操作と衝突部位から指導点を探る。