バック事故防止の指導方法
~ 切り返しと安全確認がバック事故防止の決め手 ~
私どものバック事故防止講習では受講者の方に、バック事故を防ぐには「停(止)まる。 確認する。 やり直す。」のワンフレーズを意識づけのために何回も声かけをします。
「停(止)まる。 確認する。」の内容については他のバック事故防止指導の項でお話ししましたので、この項では「やり直す。」について説明をします。
「やり直す。」は、無理をしない!元に戻ってやり直す。また切り返しをして車を真っ直ぐバックさせる。という意味です。
バック事故は、駐車場内で多く発生し、下記のバック事故分析をみてもドライバーの焦り、無理、安全確認の省略等が大半を占め、その根底にはドライバー自身が「自分(人間)」「車」というものを理解していないことに起因しています。
▌「ハンドル操作別 事故分析ツール」Excel版を2021.12公開しましたので参考にしてください。(車種別イラストを入れ替えることで、トラック(基本はトラック画像)、乗用車にも対応しています。)
ハンドル操作と衝突部位から指導点を探る。
駐車場内で発生した加害事故154件を分析しますと、前進時26件、バック時122件、駐車時6件でバック事故は全体の約80%を占めています。
そのバック事故は駐車スペースへのバックによる出入り時が73%を占めており、その衝突部位は後部の衝突が約50%となっています。
衝突部位を見れば原因と指導方法がわかる。
衝突部位から見た分析と指導方法で貨物車用と乗用車用の二種類があります。
なお「バック事故分析&指導ツール」は無償公開ですのでバック事故でお悩みでしたら使ってください。
■駐車スペースへのバックによる出入り事故
①バック行動によるものが約90%を占めている。
駐車スペースへのバックでの出入時による事故は98件(88%)
で、○バックの入 56件(57%) ○バックの出 42件(43%)となっています。
②衝突部位は、出入りとも真後ろ後部が最も多い(下記図)
○バック入り時の真後ろ衝突 56件のうち26件(43%)
○バック出の真後ろ衝突 42件の中20件(48%)
となっており、このことは、事前に障害物等の確認しておくことが不可欠であることを意味しています。
入りの場合では「バック事故防止講習の必要性Ⅱ」で説明しましたように【停止して駐車スペースの確認】が大きな要素です。
また、出の場合では、運転席に乗り込む前に車両後部付近の状況把握が不可欠となります。
駐車スペースへの出入り別
▼発生報告書から見た真後ろ衝突バック事故内容
≫ 駐車を行う状態で、周りに他の車両が無い為、スピードを減速せずにバックし植え込みの木に激突 ≫ 得意先駐車場にてバックで駐車中に後方のポールを見落とし衝突した。 ≫ 後退時、向かい合って駐車していた後方車両を見落とし後退した為衝突してしまった。 ≫ 駐車場に車庫入れする際、後方柱に後方確認不足のため当たってしまった。 ≫ 駐車場内にて花壇に車体後方部を衝突。後部バンパーを破損 |
バック駐車時の衝突部位比率
バック出時の衝突部位比率
■衝突部位からみたバックでの駐車方法
右の動画は、バック駐車時の動画です。
コメントを入れていますので、それを参考にバック事故を起こさない駐車方法を考えてみてください。
無理をさせないために「切り返して、真っ直ぐバック駐車する。」方法を指導してください。
まず、下の動画を見てください。
▼バック駐車の比較動画
右の動画は、バックモニターのないトラックのバック駐車です。
左側➡日頃のバック駐車
右側➡原点回帰講習後、切り返し、バックは真っ直ぐバックが基本等を説明後実施した動画です。
~どの地点で停止し安全確認しているかも参考にしてください。
★ ドライバーのよい点
~ 日頃から駐車スペースの確認を車から降りで確認している。
この行為が習慣化できれば、下記の後部衝突はなくなるでしょう。
▼発生報告書に記載された真後ろ衝突バック事故内容 (再掲)
≫駐車を行う状態で、周りに他の車両が無い為、スピードを減速せずにバックし植え込みの木に激突
≫得意先駐車場にてバックで駐車中に後方のポールを見落とし衝突した。
≫後退時、向かい合って駐車していた後方車両を見落とし後退した為衝突してしまった。
≫駐車場に車庫入れする際、後方柱に後方確認不足のため当たってしまった。
≫駐車場内にて花壇に車体後方部を衝突。後部バンパーを破損
このページではバック時切り返しの必要性を説明しますので、駐車スペースの安全確認等は下のページをご覧ください。
▼参考資料 駐車スペースの確認 |
▼真後ろ以外の衝突部位についてはどうでしょうか?また指導方法は?
真後ろ以外の衝突部位は、右図のとおり
左後方18%、右後方11%、左側方9%、右側方5%の順に発生し、この部位の衝突だけで43%を占めています。
即ち、真後ろを含めると約90%と衝突部位の大半を占めてしまいます。
では、「右後方衝突」「左後方衝突」等の発生報告書の内容から指導方法を考えてみましょう。
まず、下記発生報告書の内容を見てください。
■右後方衝突
≫駐車場にバックにて駐車する際に右後方の確認不足により、駐車場の鉄柱に衝突した。
≫前方と左方の駐車車両に気をとられ、右後方の柱にこすった。
≫駐車場に後退で営業車両を入れようとして、運転席後方角を鉄柱(階段)にぶつけた。
≫得意先の駐車場に駐車し10分ほどして車両に戻ると右隣に駐車してあった車両の方に左前方部にこすり傷ができていると指摘された。
≫駐車中に、後方確認をしていたにもかかわらず、車両右後方を柱に巻き込む状態で接触
■右方衝突
≫来客用駐車場へ営業車を入れる際(バックにて)左方向に気を取られて右方向が注意不足にて外壁に衝突してしまった。
≫パーキングに後退にて駐車しようと後方確認のため、ドアを開けて確認中に、突風にあおられドアが隣に車両に当たった。
≫営業車で駐車スペースにバックにて駐車しようをした際に隣に駐車していたトラックに接触した。
■左後方衝突
≫駐車場にバック駐車しようとした際、隣に駐車していた普通車に接触してしまった。
≫駐車場にバック駐車しようと右方向ハンドルを切りバックしていたところ左横の車両に衝突した。
≫駐車場に駐車する際に、左後方の消火器BOXに気付かずに接触し消火器BOXと車両の後方バンパー部分を破損した。
≫駐車スペースにバックで駐車する際、車体左後方部を敷地内に駐車している原付バイクに接触し、原付バイクが横転してミラーが破損した。
≫駐車場にバックで入れようとしたところ、車輌左後方側を後ろにあったポールにぶつけてしまいました。
■左方衝突
≫営業所内の駐車場に駐車しようとし、敷地内にある倉庫に車の左側面を擦ってしまった。
≫駐車しようとした際に、左方より車が来たため、急いで駐車しようとして、レンガに衝突してしまった。
発生報告書の内容をみると事故を起こしたドライバーは、
● 自分の車両感覚は正しいという過信
死角の範疇に障害物があるのに停まって確認せず「大丈夫だろう。」と過信の行動で事故になっています。
(原点回帰講習で「自身の車両感覚は曖昧」を体験させる必要があります。)
● 一点に意識が集中して他方が疎かになっている。
ポイント・ポイントで停止して他方の安全を確認する必要があるのに、動きながら今ある危険のみに集中し行動している。
● やり直す。という意識が働いていない。
不安に感じたら、やり直すか、切り返して真すぐにしてバックする。など一度リセットすることを考えていない。
~ 無理が事故につながってい。 ~
● 一回で駐車スペースに入れる意識が強すぎる。~カッコよさを求めているのでは?~
バック駐車の動画を見ていただいても分かりますように、切り返し、二段階停止にかかる時間は、一回での駐車
より20秒~40秒の差でしかありません。長くても1分です。この約1分を惜しんで事故を起こしている。
などが読み取れます。
■ バック駐車する際は、下記図Aの駐車方法をBの切り返しての真っ直ぐバックする駐車を指導・実践させてください。
A 切り返しのないバック駐車
B 切り返しのあるバック駐車
◆支援チームからのアドバイス
実技指導する際は、
➊ 図AとBの方法を実施させ、体感した違いの感想をノート等に書かせる。
❷指導者は、下記の切り返し理由①~④を説明し、ノート等に記載させた後、再度実施させる。
等を行えば効果的です。
実技指導用の「バック事故」実技講習ノートがありますので参考にしてください。
内容は、右の画像をクリックすれば、ページに移動します。
右の動画は、ネッツトヨタ新大阪㈱ 寝屋川店の協力のもとに作成したバック事故防止動画です。
~バック駐車編
解説付きで説明しておりますので、社員指導の参考動画として活用してください。
最近、パーキングアシスト付の車両が出回るようになりました。
このパーキングアシストは、超音波センサーやカメラを使って周囲の障害物を検出し、駐車スペースを判断しています。
右の動画を見ていて感じますのは、自動であっても
●「停止して駐車スペースを確認している。」
●「無理をせず、切り返しを行なっている。」
ところにあります。
このプログラムされた動作は、人間が駐車する場合も必要だということではないでしょうか。
① 駐車スペースに自車が収まるかは、スペースの確認と隣接車のⒶⒷを見れば判断がつきます。
② ①で収まる判断がつけば、スペース内の中心を真っ直ぐバックすればⒶⒷ車に接触することはなく、バック時左右の安全確認が省略できます。
③ ハンドルを切って向きが変わるのは前輪のみで後輪は変わりません。
前輪で微調整しながらバックするよりも、前進で調整し直線で後退する方が効率的です。
④無理に一回で駐車するより「楽に安全に」を主眼におくなら切り返してのバック駐車が一番
右図のように見えない部分の後部右角や左方に注意を集中して無理をするよりも、前段階で「切り返して前進し、駐車スペース部分の中心部を真っ直ぐバックする方が安全で、また、前進することで後方の障害物等の確認がしやすくなります。
▼切り返してバックする際もポイント・ポイントで安全確認
㋐地点
バック開始前の停止で、駐車スペース後方の安全確認と自車の位置確認
㋑地点
駐車スペースに入る前に停止して、ⒶⒷ車との間隔を確認
㋒地点
1~2m手前で停止して左右と後ろの安全確認
注:バックモニターがあっても㋒地点で停止
を実践させてください。
▼切り返しのあるバック駐車動画
下に車種別の動画を掲載しておきましたので参考にしてください。
普通車
貨物車
バ ス
参考 バック駐車時のヒヤリハット(貨物車)
▼バック駐車時の ヒヤリハット状況 | ▼ヒヤリハット体験による自身の改善内容 |
バック時バックした時、車庫の外壁の角に車をぶつける。 |
見えない場所、初めての場所等については、下車し確認する。バックミラーに頼らない。 |
駐車をしようとバックしていた時2tダンプが急に現れ、接触するところだった。 |
誘導者はいるが、誘導が途中で終わる場合もあるので、指示の徹底が必要である。誘導者に全てを任せず、自分でも周囲の状況確認を行い、危険を回避するよう注意する。 |
▼ 目標とポイントポイントでの安全確認と誘導操作確実に行うことが必要です。
下の二つの動画を見比べてください。
左側は、目標を見失い何度も切り返しを行ない、駐車場所も変えました。やり直すことも事故防止の一つです。
右側は、支援チームが推奨しています「新入社員向け駐車方法」で、基本操作がわかれば後は応用でスムーズな駐車ができます。
駐車スペースからのバック出時の事故は、右の図のとおりですが、もし、回数別の事故発生率がわかるのであれば、バックの入りよりも発生率は高いと推測されます。
▼理由その1
隣接車やピラー等の死角が多く、死角距離も長い。
駐車スペースからバックで出の衝突部位比率
≫駐車してから時間が経過し周りの状況が変わっていることを忘れないこと。
≫乗車時に周りの確認することを忘れると、死角が多いことからだろう運転になりやすく事故につながりますので、必ず乗車前に周りを確認してください。また、人や車の行き来が多い場合は頭からの駐車は極力避けることが無難です。
■参考 ヒヤリハットから見たバックの出(貨物車)
▼バック出が起因する ヒヤリハット状況 | ▼ヒヤリハット体験による自身の改善内容 |
駐車場に前進で車を止め、所用を済ませて移動する際、後ろを確認せずに後退して、他車とぶつかりそうになった。 |
・バック駐車を実施する。 ・バックカメラを付ける。 ・バック時に助手を付ける。 ・十分に後ろを確認する。 |
▼理由その2
ハンドルの切角が小さい。
切り返しの項で説明しましたように、ハンドルを切って向きが変わるのは前輪のみで後輪は変わりません。
右図のように、左右に車両がある場合、駐車スペースから抜け出さない限り大きくハンドルを切って向きを変えることができません。自車の車長以上の車路幅があるところでなければ切り返しで四苦八苦することになるでしょう。
▼理由その3
車の誘導する難易度が高い。
○ 図の駐車場でバックする際の難度は、
バックの車庫入れ➝ 難度 1 としたら
バックでの出は、 左側の出➝ 難度 3
右側の出➝ 難度 5
となります。
◆支援チームからのアドバイス
車を頭から駐車する場合は、 車路の幅、車室の幅、奥行き を良く確認してから駐車しな いと、バックで出庫する際、上記難度のとおり非常に難しく(事故につながる)なります。
特に、車路5m未満の場所は避け、出る方向は、左側のバック出を基準にしてください。
関連項目
≫ バック事故防止講習の必要性Ⅱ( 安全確認の第一歩は停まる ) ≫ バック事故防止~ 新入社員への駐車・誘導方法の指導 ~(動画に基づいた指導と説明) ≫ 交通事故対策に悩んだら「原点回帰」の体験型講習を!(交通事故形態に対応する事故原因と指導の考え方) ≫ ヒヤリハット分析から見た指導方法8 (バックに対する指導方法) |