ヒヤリハット分析から見た指導方法3

 

施設からの出入り

 

に対する指導方法


 

 

  今回は、「施設からの出」での安全確認を中心に指導方法を説明します。  

 

 「施設からの出」での安全確認は、信号なし交差点や信号発進時等の安全確認に連動しており、また、管理者の立場から考えると、施設から出る際の運転行動は「見えない管理を見える管理」にできる部分で、継続して指導すれば「安全確認の習慣づけ」ができます。

▌安全確認とは?

 辞書では、「危険なところがないか目で見て判断すること」ですが、自動車運転時の究極の目的は、交通事故を起こさないための根拠・担保が安全確認ということになります。

 交通事故報告書に「安全確認をしたが当たりました。」では、安全確認とは言えず、’’ただ見ただけ”ということになります。

 一度、社員の安全確認についての認識度調査をしてみては?




■「施設からの出入り」時のヒヤリハット実態



  

 ヒヤリハットの形態別で一番多いのが129件の「確認不足」で全体の25%を占めています。

 ≫「確認不足」の場所では、「施設からの出入り」35件が27%施設からの出入り時のヒヤリハットは「確認不足」が83%と最も多くなっています。 

 ≫出入り別では、施設・駐車場からの出が31件で全体の74%を占めています。 


≫施設・駐車場からの出での主原因のほとんどはヒヤリハット記載したドライバーによるものです。



■施設等から出る際のヒヤリハット原因



 ヒヤリハットのドライバー側の主原因は、右表のとおり

≫ドライバーの一時不停止左右不確認

がもっとも多くなっています。

 

 予想に反して多いのがガードマン誘導の過信です。

 右表のヒヤリハット内容を下記に掲載していますので参考にしてください。

 


① 一時不停止と左右不確認(抜粋)

 ▼ ヒヤリハット状況

道路を横断する際左右確認を怠り、市道を車で通行していた第三者と接触しそうになった

施設から出ようとした際一旦停止を怠ったため、一般車両に接触しそうになった。 

施設から出る際出入口で側面から来た車輌に衝突しそうになった。

出口から道路に出る時左右をよく確認しなかったため、第三者と接触しそうになった。

出口から道路に出る時、通行車両と接触しそうになった。

 ▼ ヒヤリハットに対する改善すべき事項

△市道を横断する前に一旦停止し左右を確認する。

 

△市道を横断する前に一旦停止し目視確認をする。

 

△出入り口では、一旦停止し、指差確認をして誘導員の指示に従う。

△処分場から出る時は一旦停止し左右を十分確認する。

 

△出入口では、必ず一旦停止をし左右確認を徹底する。


② ガードマン誘導過信(抜粋)

 ▼ ヒヤリハット状況

工場から出ようとした時ガードマンの指示に従い発進したが、自転車に気付いていなかったので、ぶつかりそうになった。

警備員の誘導で施設からバックで車道に出ようとした時自転車が無灯火で飛び出してきた。

施設から出る際ガードマンの誘導により右折をしようとしたら、左方向からの車両に気付かず、接触しそうになった。

駐車場へ車両を移動している時一旦、一般道路へ出て移動が必要な為、ガードマンの誘導を頼りに車を発進させたら、左側から来ている車両に気付かず、衝突しそうになった。

トラックで、会社の外に出ようとした時警備員の合図で公道に出たが、右側から走行してきた車両を止めることができなかったようで、接触しそうになった。

 ▼ ヒヤリハットに対する改善すべき事項

見通しが悪いので、ゆっくりでるようにしている。

 

 

警備員の誘導があっても、必ず自分の目、耳でよく確認する。

ガードマンの誘導に頼らず、自分の目で確認を行い、視界の悪いところもあるので、十分に注意を払う。

ガードマンの誘導に頼らず、必ず自分の目と耳で確認を行う。

 

警備員だけに頼らず、自分でも確認を行う。

 

 


③ バック時後方不確認(抜粋)

 ▼ ヒヤリハット状況

バックして出ようとした時後方に人がいる事に気付かずバックして接触しそうになった。

駐車場を出る時見通しがわるいため、バックで出る際に、通過する車両にクラクションを鳴らされた。

駐車場から出ようとするときサイドミラーを見ながらバックさせようとした時に、いきなり横切る車両があり焦った。

 

バックで走行時学生たちがトラックの後方を横切った。

 

トラックからの荷降ろし作業が終わり、バックで工場から出ようとした時真後ろにいたフォークリフトに気付かず、接触しそうになった。

 ▼ ヒヤリハットに対する改善すべき事項

駐車する場合は、なるべくバックで出ないような駐車をする。

 

出入り口に確認しやすい場所にミラーを設置する。バックで駐車する。

~かもしれない、と言う運転を習慣付ける。ゆとり運転に心掛ける。駐車場に車が多い時は、誘導者を付け安全を確認してもらう。

トラックでのバック走行は誘導員の合図なしでは禁止し、合図だけではなく目視も必ず行う。

 

バックする時は、前後左右しっかり確認し、ゆっくり走行する。  


④ 片方の車・歩行者のみ確認(抜粋)

 ▼ ヒヤリハット状況

会社から道路に出る際左折時に右から来る車に気を取られ、左から自転車が来て、車の前を通過し、驚いた。

車で駐車場から一方通行道へ出るとき一方通行車の来る方向だけを確認して、道に出ようとして、逆方向から前を通った自転車をはねた。

駐車場へ移動しようとした時右側に大型車両が停車していたので、左側からの車両が途絶えたのを見計らい、右側の安全確認を行いながら出庫しようとしたら、左側から自転車が自車の前をスレスレで通過した。

現場から公道に出ようとしているとき現場から、公道に出ようとした時、一方から来る歩行者のみに気をとられ、反対から猛スピードで来た自転車の接近を見落とし、危うく接触しそうになった。 

 ▼ ヒヤリハットに対する改善すべき事項

片側だけ見て十分と思わずに、必ず反対側も確認しながら進入する。

駐車場から一歩通行道に出る車は、車の来る方向だけを注意しないで、両方を確認する。

 

安全確認は常に行う。

 

 

 

誘導員を配置し、路上に出る時は指示に従うのは当然であるが、万一の場合を配慮し、確実に左右の安全を再確認の後、発車するようにした。片側だけ見て十分と思わずに、必ず反対側も確認しながら進入する。 


 

▼「参考動画」

 事故は「注意していないから」ではなく、「誤った注意の集中」によっても起こるともいわれています。右の動画は幹線道路に進入する際右からの車両に意識が集中し、前方・左の安全確認が不十分なために起こったヒヤリハットです。

▌出発や発進時、目視やミラー確認を含めた安全確認順番を決めるのも一つではないでしょうか?

▌講習をして感じることは、動き出してから安全確認をするドライバーが多く存在します。

 安全確認してから動かすことを忘れずに指導を!

○JAF MATE社「ドラドラ動画」に安全確認関連動画があります。


⑤ 駐車車両、カーブミラーの死角(抜粋)

 ▼ ヒヤリハット状況

≫工場から道路に出ようとした時停車中の車が死角になり、右から来た車に接触しそうになった。

 

≫工場から道路に出る際通過した車の後ろに、ミラーに映らなかった自転車が出てきた。双方の発見が遅れた、自転車の急ブレーキ

 ▼ ヒヤリハットに対する改善すべき事項

△道路に出る時は、必ず一時停止し左右の確認を慎重に行う。

 

△出入り口のミラー確認する際は、~かもしれないと、危険を予知を行う。

 


 

 動画は、実技講習時にメガネカメラを掛けてもらい施設から出る際の状況です。ドライバーは左右の安全確認をしていますが、停止しての安全確認はなされているでしょうか? 停止しての安全確認はどの位置が良いか検討してください。


 指導方法

 

安全確認の基本

 皆さんが、社員の方に「安全確認したか?」「確実に安全確認をして行動するように!」等指導しますね。

 では、安全確認とは何でしょうか? あなたなら、どう回答しますか?

 

 辞書では、「危険なところがないか目で見て判断すること」ですが、

自動車運転時の究極の目的から考えますと、

交通事故を起こさないための根拠・担保が安全確認ということになります。

 交通事故報告書に「安全確認をしたが当たりました。」では、安全確認とは言えず、’’ただ見ただけ”ということになります。

このことを踏まえて指導にあたってください。


▌社員の安全確認等の意識・認識度やバック駐車行動を把握してみたい方は、集計用ツールを公開していますので、右のボタンをクリックして確認してください。



 施設からの出での注意ポイントは、交差点事故である出会い頭事故、右折・左折事故と同じであることを併せて指導する必要があります。
 すなわち施設から出は、車と人、道路が複雑に交わる場所への進入です。この危険な場所への進入の重要ポイントは、安全確認で、安全確認を確実に行うためには一時停止が重要キーポイントになり、一時停止する場所は施設内で行なわなくてはなりません。
 施設からの出での事故は、ほとんどがこの点を省略して発生しています。この点について私どもは施設からの出る際も二段階停止の指導をしておりますので参考にしてください。

1 まず施設内で止まる。(一回目の停止)

 

  施設出口手前4m~5m手前で停止して、カーブミラーでの安全と目視の安全確認の指導をしてください。


 ~ 見えない管理を、見る管理にするには、まず出発地点での見る指導が有効的です。 ~

 

 下記の企業が取り入れている意識づけ方法を参考にしてください。

二段階停止の意識づけ方法 (西日本JRバス)

≫ 施設の出入口に停止線が引いてあります。

➡ 車庫からの出発時、必ず励行させることで一時停止の意識づけになります。

 

また、前車との車間距離等を意識づけるため「安全空間4m」の表示をして車間距離の意識づけもしています。

二段階停止の意識づけ方法 (ネクスト㈱)

≫ 施設の出入口手前に黄色の停止線が引いてあります。

➡ この停止線は、停止線で止まる意識づけをするために、社員等の発案で停止線を引いたとのことです。

 

 やはり自分たちで決めたことは守っておられました。



 出口手前や交差点手前で停まる意識づけと習慣に導く指導が必要です。

 ★ 二段階停止の意味を理解させるには、まず原点回帰講習の「死角」「車は急に止まらない」等を体験させるのが効果的です。

2 見せる停止(二回目の停止)

 

 この見せる停止が重要ポイントです。

 これは、信号のない交差点等の停止方法にも言えることですが、ほとんどのドライバーはこの行動ができていません。

 

見せる停止の必要性 

①歩道を通行する人や自転車、道路を通行する車や二輪車のドライバーに当車が歩道や道路に出ることをを認識してもらうことが重要です。下記図㋐

 

②自分の目で見る安全確認を先行した行動をとらない。図㋑

 


 

※ 自分の目での確認が先行すると、1~2m前後道路に出てしまいます。

 乗用車の場合、2m前後

 トラック等キャブオバー車の場合、1m前後

道路に出ることを意識させる体験講習が必要です。


 図㋑のようにドライバーの目で180度全部が見える位置まで進行してしまうと、通行中の自転車Ⓑは驚くでしょう。また自転車が出口直近まで近づいておれば交通事故になります。

 図㋐のように直近で停止して通行する歩行者や自転車に自車の存在をアピールしてください。 

指導方法

 下記の「手順」の動画は、細街路交差点で普通車が交差点に進入する行動を撮影したものです。

見比べて指導の参考にしてください。

 自社敷地内の建物等を活用して実技指導するのも一つの方法です。


参考動画(見せる停止)

 右の動画は、実技講習時に別々のドライバーが施設から出るところを撮影したものです。

 見ていただいて分りますように施設から出る直前に見せる停止をして安全確認が必要なことがわかります。

 低速であっても動きながらの安全確認は事故につながるのです。


 

構内道路での横断また右左折を、

① 二段階停止と言わずに日頃の運転をしてもらう。

  (他の者は見学、降車後ドライバーに歩行者・自転車の立場からの意見を言ってもらう。)

② 次に、管理者・指導者が二段階停止の必要性を説明し、二段階停止の運転行動を実施してもらう。

  (②終了後、見学者に①②の違いと今後の施設からの出・細街路交差点の通行方法の実践行動目標を提出させる。)

★余地や場所がない場合下記動画をご利用ください。


参考動画(細街路交差点の通行の現状)

 右の動画は細街路交差点で撮影したものです。

ほとんどの車が上図の㋑の状態です。

 確実な安全確認は、停まっての安全確認が一番です。

 

~ 見えない管理を、見る管理にするには、まず出発地点での指導が有効的です。 ~


3 道路進入時の安全確認



 右の写真の状態から右折する場合は、当然左右の車等に注意しますが、左折の場合はどうでしょうか?

 

 左折の場合は、右側から進行して来る車両等に注意がいきがちですが、この場合左からの人や自転車等の安全確認も必要です。


「参考動画」~ JAF MATE社「ドラドラ動画」

 

 事故は「注意していないから」ではなく、「誤った注意の集中」によっても起こるともいわれています。

 右の動画は幹線道路に進入する際右からの車両に意識が集中し、前方・左の安全確認が不十分なために起こったヒヤリハットです。

○JAF MATE社「ドラドラ動画」に安全確認関連動画があります。

画像をクリックすれば動画が見られます。


 動画を見てお分かりなように、施設から出も交差道路への進入も、車と人が複雑に交わる場所への進入です。

 この危険な場所への進入には、一時停止と安全確認が必要不可欠なのですが、その前に自分が運転する車の死角やミラーの見える範囲を知っておくことも重要です。

◆支援チームから ≫≫ 原点回帰講習をしてみると、ほとんどのドライバーが死角距離を短く感じています。

 トラックやバスの場合、アンダーミラーが有りますが、その角度によっては見えない部分も出てきます、その見える範囲を認識させたうえで施設からの出の指導をすれば効果的です。