「体調不調による暴走事故」から学ぶ発進時追突の防止方法
平成28年2月25日大阪・阪急梅田駅前のスクランブル交差点で、運転中に突発性の病気を発症し自動車が暴走、歩行者をはねた交通事故がありました。
この事故で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また負傷された方々には心からお見舞いを申し上げます。
では、この様な事故が起こらないように日頃の運転で心がけておくことはあるでしょうか?
関連項目
≫ ⑬追突しないための体験型指導方法① (基礎編 ツール・アプリを使った空走時間体験等) ≫ ⑭追突しないための体験型指導方法② (実技編 停止距離体験、停車時相手に威圧を与えない車間距離等 ≫ ⑮★追突しないための体験型指導方法③ (実践編 事故報告・発進追突事例からみた指導方法、 同乗指導方法、ドライブレコダー装着車の指導方法 パスワード必要) |
この事故ついて私どもが注目するのは、防犯カメラがとらえていた映像内容の記事です。
「事故が起きた交差点から、およそ200メートル手前で、事故を起こしたとみられる黒い車が、ハザードランプをつけて停車する様子がとらえ、およそ1分後、車が交差点の方向へ急発進し、直後に暴走事故が起きた」
と記述されています。
運転者は「ハザードランプをつけて停車した。」
この時、ハザードランプに手が伸びる前にチェンジを「N」か「P」しておけばどうでしょか?
≫ 「N」・「P」
➡ アクセルを踏んでも車は発進しません。
この操作は、日頃から信号待ちや渋滞中に「N」・「P」することを癖付けておかなくては咄嗟の操作ではできないと思います。
※信号待ち等での停車時に「N」・「P」にする操作は、発進時追突防止方法と連動しています。
以下にその理由と指導方法を説明していますので、今回の事故を教訓とした指導の参考にしてください。
なぜこの様なことを言うかといいますと、業務中追突事故は全発生件数(第一当事者のみ)の26%を占め、
また、追突事故の22%は発進時追突です。 (3社1000人データ、追突97件 うち発進時追突21件)
※交通事故の発生内容を見てください。
下記に、業務中に発進時追突を起こした人の発生報告書の内容を抜粋して掲載しております。
原因は、脇見に次いで多いのがブレーキ操作不適となっています。
■発進追突の交通事故発生報告書内容(抜粋)
≫渋滞中、隣の車が動き出したのを見て、進んだのと勘違いをして前方車輌に追突 ≫渋滞中、脇見をしていて追突してしまった。 ≫停車中にブレーキを踏むのが甘くなり追突 ≫赤信号で停車中にブレーキを踏んでいた足が滑り、アクセルを踏んだため前車へ衝突した。 ≫赤信号で停車中に鞄の中身を確認していたところ、前車が発進したと勘違いし衝突した。 ≫赤信号で停車中に地図を見ていたために前の車が発車したと勘違いし衝突した。 ≫赤信号待ちで停車中に足元の書類を拾っており、周りの車が動き出し見切り発進したために停車中前車へ衝突。 ≫信号待ちをした際に車内で書類を見ていて、ブレーキを踏んでいたが踏みがあまく車が前進し、あわててブレーキを踏んだつもりがアクセルを踏んでしまい前方の車輌にぶっかった。 ≫信号待ちをしていた所、眠気でブレーキペダルから足がはずれ前方で信号待ちをしていた車両に追突した。 ≫信号待ちの際、ブレーキの踏み込みが甘く、自車が動き出した。直ぐに気付いてブレーキを踏んだが間に合わず前車に衝突 |
上記事故を起こした人が、チェンジを「N」・「P」にしていたら防げた追突事故もあったのではないでしょうか?
管理者の方は、自社の追突事故の発生内容を再確認してチェンジを「N」・「P」 していたら事故は防げたかを検討してみてください。
私どもが行う事故惹起者の実技講習の受講者を見ていますと、
※ 走行時及び信号停車時の車間距離が狭い。
※ 信号待ちや渋滞時の停車時、右の写真のように
チェンジをDレンジに入れたままブレーキを踏んだ状態
で、信号が変わって発進するまで同じ状態です。
~ 渋滞等で時間が長くなっても同じなのです。
ドライバーの長年染みついた癖や動作は「言葉による指導」だけではなかなか抜けきれません。
私どもが行う実技講習でも、信号待ち等の停車時チェンジを「N」してブレーキを踏んでください。と指導するのですが、次の信号待ちでは「D」レンジのままでブレーキを踏んでいます。
これで終わってはダメで、信号で停まる都度繰り返し。繰り返し。その操作をしてもらい、停まる。「N」レンジにする。ことを体感してもらう指導をしております。
また、路上講習に入る前に「車は急に止まらない。」などを含んだ「原点回帰講習」先にしておりますので数回の指導で、継続実践していただける方が多いです。
今回、冒頭の痛ましい事故がありました。このような事故を起こさないためにも、信号待ちの停車時は「N」レンジにしてブレーキを踏む指導をしてはどうでしょうか。
下記の指導方法は、管理者支援ページ内の
⑬追突しないための体験型指導方法① (基礎編 ツール・アプリを使った空走時間体験等)
⑭★追突しないための体験型指導方法② (実技編 停止距離体験、停車時相手に威圧を与えない車間距離等)
⑮★追突しないための体験型指導方法③ (実践編 事故報告・発進追突事例からみた指導方法、 同乗指導方法、ドライブレコダー装着車の指導方法)
を抜粋して掲載しております。
指導方法
1 前車に威圧感を与えない車間距離をとる。(追突しないための体験型指導方法②再掲 詳細省略)
運転席から見て、前車のタイヤが見える地点から少し手前で停車する。
これは、
≫ 前車の死角部分を見える範囲に置く
(良好な視野の確保と心のゆとりを持たせる。)
≫ とっさ時に追突を軽減する距離を稼ぐ
為です。
① 日頃の車間距離測定
≫ 後方の車に乗車し、日頃の車間距離をとる。
≫ 降車して車間距離を測定
② 前車の運転者から見た場合を体感
測定が終われば前車に乗車させ、運転席から
バックミラー、サイドミラー見て
※ 威圧に感じるか? ※ 接近しているように感じるか?
威圧等を感じた場合は、前車を威圧に感じない場所まで前進
③ 威圧に感じない車間距離測定
車間距離を計測し、日頃の車間距離の計測記録との違いを確認させる。
※「5m前後の車間距離を空けると割り込まれる。」との反論があった場合は、
≫「入れてあげなさい。あなたも、どうしても車線変更しなくてはならない場合があるでしょう。お互い様です。余裕のある運転をしましょう。」と指導してください。
2 停車時のチェンジ等操作
停車したら、チェンジを「N」レンジに入れる。
これは発進時、
■誤発進操作の軽減
■発進時のチェンジ操作にかかる時間を得る
ためです。
この操作に慣れてくるとドライバーは、
■「余裕のある発進」ができるようになり、
■前車との車間距離が広がることで、良好な視野が確保でき前車の急な動きに安全な対応できるようになります。
信号で停止した場合や渋滞時チェンジをN(ニュートラル)にしてブレーキを踏む。
※ 停車時、チェンジをNにする操作は長年の癖が身についていますので、同乗指導で頻繁に操作させる必要があります。
3 発進時の指導
≫「前車が動き出してからチェンジを入れて、発進する。」ことを指導してください。
~ 停止距離を稼ぐのと、前車や前方の状況を把握しやすくするためです。
≫ 後ろの車が「クラクションを鳴らす。」とか「迷惑をかける。」等と反論が出るかもしれませんが、今までこの同動作で「クラクションを鳴らされた」ことはありません。これはドライバー同士の許容範囲であり、追突事故を起こす方が他人に迷惑をかけることになります。
~ 指導者の方が運転する際、検証を兼ねて実践していただければ分ると思います。
■ この1、2、3の一連の操作等を身体で覚えさせることができれば、下記写真の場面のような
右左折時や料金所通過時の追突防止に、また進路変更時の追突防止にも繋がります。